平和への新ヴィジョン
- 2019年4月掲載記事 -
この記事は2019年4月にさくら新聞に掲載されたものです。
三年前、今上天皇が「生前退位」と言う歴史的な意向表明をされて以来、国民の関心を一身に集めていた「新元号」が、遂に今月初めに閣議決定を経て「令和」と発表された。4月30日の今上天皇退位、翌5月1日の新天皇即位に伴い、新元号の施行開始となる。愈々新時代の到来である。歴史が、芝居の幕を引き、また開けるかのように一夜にして変わるものでないことは誰もが知っている。しかし、歴史は確かに動いている。「令和」の時代へと動いているのである。しかし、どこに向かってだろうか?「令和」はどんな時代になるのだろうか?
「令和」と言う時代に、私たちは何を期待し、何を目指すべきなのか? 聖書は私たちにこのように言う。「幻(ヴィジョン)のない民は滅びる」と。果たして私たちは、日本国民としてこの国にどうなって欲しい、どうなるべきだと言うヴィジョンを持っているだろうか? アメリカに来て最初に感じたことの一つは、米国人が、おしなべて日本人より政治的関心が高いことである。通常も然ることながら、特に大統領戦の頃には、中・高校生は勿論、小学生までも、「一端(いっぱし)」に政治論、選挙戦についての会話に加わる。日本人は、それに比べて政治について「受け身」であり、きわめて「あなた任せ」的である。米国第35代大統領J・F・ケネディーは、その就任演説で、「あなたの国があなたのために何ができるかを求めてはならない。 あなたがあなたの国のために何ができるかを求めなさい」と言って国民一人一人が政治、国家建設と運営に積極的に関心を持ち、関わるように挑戦した。それは、「令和」時代の黎明、日本の新しい門出という危機に立つ私たちにも、また挑戦となる言葉である。
「令和」は、あくまで「元号」であって、政治目標ではないが、その命名の背後には「期待」がある。それは、国民として私たちが、生活の中で目指すべき象徴的目標である。安倍首相は、新元号発表後の談話で次のように語った。「一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め、令和に決定致しました。文化を育み、自然の美しさを愛でることができる平和な日々に、心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ち溢れた新しい時代を国民の皆様と切り開いていく。新元号の決定にあたり、その決意を新たにしております」。換言するなら、「令」が意味する日本文化の持つ薫り高き美しさを更に追求し、それを育み、またその中に育まれながら、国民の一人一人が最大限の自己実現を果たすために必要なことは「和」、即ち「平和」であると言うのである。著名人を始めとする多くの人々も、「令和」の「和」を「平和」と結び付け歓迎している。
戦争の悲劇を外地・内地の両方で、嫌と言うほど実体験した日本は、その後の「昭和」の40年、「平成」の30年、「平和ボケ」と言われるほど「平和」を謳歌した。感謝なことである。誰もが今願うことは、その「平和の継続」である。それが、「令和」と言う新元号を決めた政府と、それを受け止めた私たち国民とのコンセンサスであるはずである。しかし、「自国第一主義」が蔓延する今の世界で、今後「平和」をこれまでと同じように維持することは大きなチャレンジとなるであろう。少なくとも、これまでのような、自国の行き方・在り方に対して「あなた任せ」な受動的姿勢、「棚から牡丹餅」的な平和主義では間に合わないであろう。そこには、単なる「力の均衡」としての平和を越えた平和の追求から始まって、沢山の積極的努力・行動が求められるであろう。「平和を造る者は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるからです」(聖書)。
「西郷牧師、世相を斬る!」は、米国ワシントンDC、及びテキサス州ヒューストンに在住する日系人のためのコミュニティ・ペーパー「さくら新聞」に、2017年5月から2020年3月まで、毎月1回「同題」で連載されたものです。当初5回の連載予定で原稿依頼を受けましたが、その後、数度の延長を経て35回目になったところで、折しも世界的蔓延の始まったコロナ禍中、「さくら新聞」が暫時無期限の休刊となり、その後、西郷牧師も本帰国となり、結果として連載ストップとなりました。このたび、周辺知人の希望・提案もあり、西郷牧師の社会への問いかけ「エッセイ」として、本ホーム・ページに週1回のペースで「再連載」することになりました。
投稿者プロフィール

- 元ワシントン・インターナショナル日本語教会牧師。ジャパニーズ・クリスチャン・センター・オブ・ワシントン責任者。日本で聖宣神学院卒業後、日本宣教会・久我山宣教会副牧師、1980年ビリーグラハム東京大会事務局主事、1982年日本伝道会議事務局主事を経て渡米。アズベリー大学(聖書学専攻、同言語学副専攻)卒業後、アズベリー神学校牧会神学修士、プリンストン神学校旧約神学修士を取得、ドルー大学旧約学PhD課程コース・ワーク終了。米国で、プリンストン日本語教会、ニューヨーク日本語教会、および現教会を開設、現在に至る。
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