恐れおののいてはならない
- 2020年3月掲載記事 -

この記事は2020年3月にさくら新聞に掲載されたものです。

正に世界を席巻している「新型コロナウィルス感染症」。毎日テレビのニュースをほぼ全面的に占領している。ほんの3カ月前、多くの期待をになってスタートした2020年(特に日本ではオリンピック開催国として抱負も一杯であった)。それが、最初こそ「対岸の火」であった中国武漢の出来事が、あれよ、あれよと言う間に、このような事態になるとは誰が想像したことか? しかし、今やこの感染症は、世界の150以上の国々に広がり、感染者数25万、死亡者数1万を超えた。教育関係でも、休校・オンライン講義を余儀なくされ、学校に行けない子ども・生徒たちが世界中で5億以上とのこと。世界各地で、大イベント・特別行事開催延期・中止、国内外旅行・不要不急の外出・往来の制限・禁止。食堂・遊興場等の閉鎖など、生活のあらゆる点にまで影響を与えている。

そのような中、物資の買い占め、不法・不当な転売、詐欺や詐欺まがいの悪徳業の出現・横行。それに関連しての暴力・暴行などの派生的事件、更には、感染者・その家族への中傷やいじめ問題も起こっていると言う。脅かされているのは日常生活だけではない。医療の現場も限界に来ている。経済界はストック・マーケットを中心に、リセッション、ディプレッションを警戒して毎日敏感に反応。こんな状態がいつまで続くのか、どこまで拡大するのか? 今の状態がピークで、このまま収束・終息に向かうことを願う。しかし、仏国のマクロン大統領も、この状況下「戦争宣言」をした。米国でも、これまで「大丈夫!」で押して来た大統領が、ここに来て自らを戦時体制下の大統領に見立てるほどに深刻さを増している。確かに、私たちは、今、終わりの見えないまま、好むと好まずにかかわらず一兵卒としてコロナウィルスとの戦いに参戦している。それでは、私たちはどう戦うべきなのか? 

まず、刻一刻アップデートされる、この問題に関する信頼できる確かな「事実」「情報」をしっかりと知る必要がある。しかし、ここで問題になることは、このような危機的状況においては、しばしばこれらの情報が、かえって私たちを「恐れ」させ、その結果、情報の理解・見極めにおいても、その後の判断・行動においても冷静さを失い、誤らせてしまうことである。「恐れ」の問題は、単なる宗教や精神論の課題ではない。実際問題である。それゆえ、CNNニュースがこの感染症問題を扱うにあたり、選んだ編集テーマは「FACTS & FEAR(事実と恐れ)」であった。今日(3月19日)も、NYの州知事アンドリュー・クオモ(民主党)氏が、州議会の演説で「コロナウィルスに関する恐れ・パニックと誤った情報は、ウィルスそのものより感染しやすく、かつ危険である」と、いたずらな「恐れ」の弊害を強調したことを報じた。

このような危機的なときに、ルールに従わない傍若無人、無謀な態度は、言うまでもなくご法度である。それは、勇気ある行動でも何でもない。かえって愚かで、結局は人々に迷惑をかけることになる。しかし、同時に、危機的な情報に、それが事実とは言え、怯えたり、恐れから過剰反応して精神的に萎縮してしまうこともタブーである。

恐れやパニックは、私たちの頭脳的、精神的、身体的な能力を著しく損なう。即ち、人は恐れると、できることまでもできなくなる。逆に「窮鼠猫を食む」と言われるが、逆上して性格が変わったように狂暴になることさえある。危機には平穏・平安な心が必要である。そして、それは、互いの間の思いやりと平和にも繋がる。それゆえ聖書も、困難のただ中で怯え、たじろぐ人々を何十回となく励まして言う。「恐れてはならない。おののいてはならない。あなたの神、主があなたの行く所どこにでも、あなたと共にいるからである」(聖書)。

「西郷牧師、世相を斬る!」は、米国ワシントンDC、及びテキサス州ヒューストンに在住する日系人のためのコミュニティ・ペーパー「さくら新聞」に、2017年5月から2020年3月まで、毎月1回「同題」で連載されたものです。当初5回の連載予定で原稿依頼を受けましたが、その後、数度の延長を経て35回目になったところで、折しも世界的蔓延の始まったコロナ禍中、「さくら新聞」が暫時無期限の休刊となり、その後、西郷牧師も本帰国となり、結果として連載ストップとなりました。このたび、周辺知人の希望・提案もあり、西郷牧師の社会への問いかけ「エッセイ」として、本ホーム・ページに週1回のペースで「再連載」することになりました。

さくら新聞 西郷牧師の世相を斬る
さくら新聞で連載された「西郷牧師の世相を斬る」の記事。コロナ禍における休刊までの35回にわたって連載されました。

投稿者プロフィール

西郷純一牧師
西郷純一牧師
元ワシントン・インターナショナル日本語教会牧師。ジャパニーズ・クリスチャン・センター・オブ・ワシントン責任者。日本で聖宣神学院卒業後、日本宣教会・久我山宣教会副牧師、1980年ビリーグラハム東京大会事務局主事、1982年日本伝道会議事務局主事を経て渡米。アズベリー大学(聖書学専攻、同言語学副専攻)卒業後、アズベリー神学校牧会神学修士、プリンストン神学校旧約神学修士を取得、ドルー大学旧約学PhD課程コース・ワーク終了。米国で、プリンストン日本語教会、ニューヨーク日本語教会、および現教会を開設、現在に至る。