クリスマスが結ぶ絆
- 2018年12月掲載記事 -
この記事は2018年12月にさくら新聞に掲載されたものです。
再びクリスマスの季節が廻って来た。私ごとになるが、5年の約束で留学のため渡米。爾来早36年の年月が流れ、今もアメリカ在住。その間、一度も、感謝祭とクリスマスをアメリカ以外の場所で過ごしたことはなかった。それが、この夏、これまでの地方教会の牧師を辞し、日米を移動しながらのフリーランス牧師となり、新しい生活スタイルに入る中、初めて単身にて両ホリデーを日本で過ごすこととなった。11月初めに成田空港から滞在前半の拠点地、栃木県佐野市に到着して一ヶ月が経つ。その間、一週間ほど東京、京都、神戸、姫路、山口、博多、熊本の地を訪れたが、どこもクリスマスのイルミネーションで美しく飾られ、久しぶりに「日本のクリスマス」を実感。ここ佐野市の隣り足利市にある「あしかがフラワーパーク」は、CNNが2014年に「世界の夢の旅行先」で選んだ9カ所の中に日本から唯一選ばれた場所。同パークは、この季節「クリスマス・イルミネーション」で飾られる。「全国イルミネーション・ランキング」で2年連続一位とのこと。せっかくの機会なので、JRに二駅乗って鑑賞。大いに目の保養をさせて頂いたが、クリスマスの「本場」は日本?と言う気分であった。
しかし、それらの経験の中で、今回一番驚いたのは山口市に行ったときのこと。街の至るところで「12月、山口市は、クリスマス市になる」のキャッチフレーズのもと、町を挙げての様々なクリスマス・イベントの案内を記したチラシとポスターを見た。牧師としての無知を恥じるが、全く新しい「山口市」のイメージであった。聞くと、宣教師フランシスコ・ザビエルが山口に宣教を試みた際、当時の当主大内義隆がこれを寛容に受け入れ、翌1552年12月9日に、同市で日本初の「キリスト降誕」を記念する祝賀礼拝が持たれたことに由来すると言う。
キリスト教は、日本ではとかく「外国の宗教」と考えられ、中々「市民権」を貰えないでいる。そのような中、小生にとって、この山口市のクリスマス・エピソードは、500年も前にすでにあった日本の「人々・大衆」と「キリスト教」との接点と融和の歴史的証拠の一つと感じられた。明治時代以降に始められたプロテスタントの宣教は、どちらかと言うと、日本の上流・有産階級、知的階級への西洋・舶来文化紹介の一部のようにして進められた。それゆえ、ともするとキリスト教はそれらの人々の「文化的アクセサリー」と見られた。それに比べ、カソリック教会の日本宣教初期における一つの大きな特色は、いわゆるキリシタン大名と言われる社会のトップレベルだけでなく、「島原の乱」が象徴するように、農村・漁村に住む貧しい、社会の最底辺に生きる人々にも届いていたことであった。しかも、それは単なる教育、教養、文化紹介の域においてではなく、そこに住む個人、コミュニティー、社会の形成・構築という実存と実生活、即ち「生きる」と言う戦いのど真ん中で、それらを支える原動力として届いていた。だからこそ人の心に触れ、繋がって行ったのである。数年前、知人の案内で天草地方の農村、漁村を訪ね、数百年前にあった教会の様子を聞き、今もそこに当時の面影を漂わせる建物を見ながら、それをしみじみと感じた。
上述の山口市は、すべては大内とザビエル両氏の間に結ばれた「絆」から始まったとして、イベントの主題を「絆」としている。これこそが、聖書的クリスマス・メッセージである。即ち、イエス・キリストは、社会の底辺の貧しさ、生きる悩みのただ中に、人として生まれ、生き、遂には十字架の死をもって、神と人、人と人とを結ぶ「絆」となられたのである。今年もクリスマスが、世界中の人々にとって永遠の「絆」を結ぶときとなるように!
「西郷牧師、世相を斬る!」は、米国ワシントンDC、及びテキサス州ヒューストンに在住する日系人のためのコミュニティ・ペーパー「さくら新聞」に、2017年5月から2020年3月まで、毎月1回「同題」で連載されたものです。当初5回の連載予定で原稿依頼を受けましたが、その後、数度の延長を経て35回目になったところで、折しも世界的蔓延の始まったコロナ禍中、「さくら新聞」が暫時無期限の休刊となり、その後、西郷牧師も本帰国となり、結果として連載ストップとなりました。このたび、周辺知人の希望・提案もあり、西郷牧師の社会への問いかけ「エッセイ」として、本ホーム・ページに週1回のペースで「再連載」することになりました。
投稿者プロフィール

- 元ワシントン・インターナショナル日本語教会牧師。ジャパニーズ・クリスチャン・センター・オブ・ワシントン責任者。日本で聖宣神学院卒業後、日本宣教会・久我山宣教会副牧師、1980年ビリーグラハム東京大会事務局主事、1982年日本伝道会議事務局主事を経て渡米。アズベリー大学(聖書学専攻、同言語学副専攻)卒業後、アズベリー神学校牧会神学修士、プリンストン神学校旧約神学修士を取得、ドルー大学旧約学PhD課程コース・ワーク終了。米国で、プリンストン日本語教会、ニューヨーク日本語教会、および現教会を開設、現在に至る。
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