内側の改革から始めたい
- 2020年2月掲載記事 -
この記事は2020年2月にさくら新聞に掲載されたものです。
船出したばかりと思っていた2020年。アッと言う間に1か月が過ぎ、2月も早半ばとなった。大衆的な角度から言うなら、今年、日本にとっての最大の関心事は、何と言っても「オリンピック」「パラ・リンピック」の開催であろう。しかし、同時に、ここアメリカに住む日本人にとっては、市民権を取った方々は勿論、投票権のない永住権保持者、短期滞留者も含めて、今年ほぼ一年間、目を離せない動きがある。それは、言うまでもなく11月に持たれる米国大統領選の行方である。そして、その結果が、好むと好まざるに関わらず、世界全体の動向とあり方に多大な影響を与えることからも、世界中の人々が関心をもっていることである。
折しも、本原稿の締め切り日の前日2月4日、野党・民主党からの大統領候補者選出の初戦となるアイオワ党員集会での投票がなされた。また同日は、事実上の与党・共和党の選挙演説とも言える、トランプ大統領による恒例の年頭「一般教書演説」もあった。
そのような年頭の状況の中、今回は、この欄をお借りして、前から気になっていた「アメリカのキリスト教信仰」に関して少し書かせていただきたい。
米国にいながら、日本の一般メディア(NHKなど)を通して、米国についての情報に触れることも多い。その中で、しばしば耳にすることは、米国の現大統領の大きな支持基盤が、いわゆるキリスト教の「福音派」「保守派」と呼ばれるクリスチャンたちであると言う頻繁な指摘である。ここでこれらの語句の意味・背景の詳細を説明することはできないが、一言で言うなら、「聖書(原典)を神の言葉、信仰と人生の究極的権威として信じ、受け入れる」人々のことである。その聖書(旧約聖書)が、イスラエルを神の「選民」と呼ぶので、聖書を真剣に信じる「福音派」「保守派」のクリスチャンたちは、プロ・イスラエルの政策に賛同すると結論し、大統領は、米国イスラエル大使館のエルサレムへの移動、同市の正式な首都としての認証、更には、極く最近行った中東和平への新提案の内容など、極めてイスラエル寄りの政策を取って来たが、それらは、みな彼の政治的中心基盤である「福音派」の人々を念頭においた選挙対策であると思われる、と言うのが日本からの報道内容の主旨である。
筆者も自らを聖書を神の言葉と信じる保守的な信仰者として、福音派の一員と自負する者であるが、上述のような政治的行動が、果たして聖書を信じる(それゆえに、イスラエル人も、アラブ人も、世界中の人々を等しく愛し、尊敬する)クリスチャンに、聖書が求めるものとは、到底思えない。今のアメリカとそのキリスト教信仰を見ていると、彼らの信仰が、アメリカと言う国の「おらが村の神」「氏神様」「守護神」と言うレベルの信仰となり、宗教になってしまったのではないかと危惧する。
このことは以前も本連載で書いたが、米国に来て38年になるが、その間何度も大統領選挙を見てきた。その中で、特に初めのころに印象的であったことは、民主・共和党を問わず、選ばれる者も、選ぶ者も、みなが挙って、キャンペーン・フレーズとして、「キャラクター・マターズ」(人格が重要である)と叫んだことである。政治は、人間の外にある行動である。確かに行動がなければ何も動かない。特に米国人は行動力のある人を好む。レーガン大統領がその良き例である。しかし、結局その行動をコントロールするものは人間の内にある「人格」である。栄華と繁栄を極めたローマ帝国の滅亡は、外的によるものではなく、「内側」の道徳的頽廃からだったと歴史は教える。日本のためにも、米国のためにも、今こそ、選ばれる政治家も、彼らを選ぶ国民も、彼らを支える宗教家たちも「内側の改革」から始めたい。
「西郷牧師、世相を斬る!」は、米国ワシントンDC、及びテキサス州ヒューストンに在住する日系人のためのコミュニティ・ペーパー「さくら新聞」に、2017年5月から2020年3月まで、毎月1回「同題」で連載されたものです。当初5回の連載予定で原稿依頼を受けましたが、その後、数度の延長を経て35回目になったところで、折しも世界的蔓延の始まったコロナ禍中、「さくら新聞」が暫時無期限の休刊となり、その後、西郷牧師も本帰国となり、結果として連載ストップとなりました。このたび、周辺知人の希望・提案もあり、西郷牧師の社会への問いかけ「エッセイ」として、本ホーム・ページに週1回のペースで「再連載」することになりました。
投稿者プロフィール

- 元ワシントン・インターナショナル日本語教会牧師。ジャパニーズ・クリスチャン・センター・オブ・ワシントン責任者。日本で聖宣神学院卒業後、日本宣教会・久我山宣教会副牧師、1980年ビリーグラハム東京大会事務局主事、1982年日本伝道会議事務局主事を経て渡米。アズベリー大学(聖書学専攻、同言語学副専攻)卒業後、アズベリー神学校牧会神学修士、プリンストン神学校旧約神学修士を取得、ドルー大学旧約学PhD課程コース・ワーク終了。米国で、プリンストン日本語教会、ニューヨーク日本語教会、および現教会を開設、現在に至る。
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